地中熱利用空調システム
地中熱利用空調システム
地中熱利用空調システムは、地中温度の恒温性を利用して地中に空気や不凍液を冷媒とした配管を施すことで、年間を通じて廃熱の有効利用でき、安定的な室内温度が得られやすくなります。
地中熱の利用により環境負荷への低減を図り、建物からの空調廃熱を大気に放熱しないため、都市部におけるヒートアイランド現象防止に繋がります。
また、一般の空調システムで必要となる冷却塔や補助熱源が不要となるために省スペース化を図れるので、中小規模の建物の改修技術としても期待できます。
特に、本研究所で採用した地中熱を利用した空調システムは、立地が臨界部の埋め立て地で河川に近く、地下水位もGL 面より1.5[m]程度下方と高いため、シルト系土層での水分を多く含んでおり、その熱特性を利用しています。
垂直パイプ
埋設した2本の基礎杭に、熱伝導率の異なる高密度PE管と金属強化PE管の熱交換パイプを垂直に装着し、2階実験室内にヒートポンプ方式の空調機により、地中との熱交換を行うシステムとなっています。
水平パイプ
熱伝導率の高いパイプを地表から一定の深さに水平に設置し、垂直パイプと同様に、2階実験室内の空調機に接続しています。空調機はヒートポンプ内蔵型とし、屋外機は使用しないことで、中小事務所ビルの改修工事にも適応できる技術としています。
水平パイプの埋設の深さは設置コストに大きく影響しますが埋設が浅いと外気温の影響を受けるため、熱交換パイプの間隔を調整するなど調整が必要となります。本実験においては、水平熱交換パイプをク-ルチュ-ブの直下に全長約30m布設しています。
クールチューブ
埋設されたパイプに外気を取り込むことで、夏期には冷却され、冬期には暖められた空気に置換されて室内に供給されます。
検証結果
夏期、冬期の各3 ヶ月間の運転中における平均放熱量と平均採熱量を計測した結果、内陸部で得られる一般的な値に対して、夏期は1.8 倍ほど多く放熱し、冬期では2.4倍ほど多く採熱したことから、金属強化PE 管の熱特性と臨海部に面した土壌温度の特性を有効に活用できていることがわかります。